森博嗣
文庫
講談社
2016-07-15 00:00:00
368

赤目姫の潮解 LADY SCARLET EYES AND HER DELIQUESCENCE (講談社文庫)

  • 森博嗣
  • 講談社
  • 368頁

レビュー
  • 自分にとって森博嗣は特別な作家だが、これはその中でも特別な作品と言える。
    エンタテインメントとしての骨格は徹底的に排除され、
    著者自身の哲学、美意識、幻想、認識論といった「肉」の部分が登場人物たちの口を借りて次々と披瀝される。
    読者は混乱し、眩惑され、それでいて頭のどこか深い領域が研磨されていくような、
    複雑な読書体験を得ることになるだろう。

    かつて短編「心の法則」で垣間見た森博嗣の本質が、遂に長編として姿を現した。
    「赤目姫の潮解」は、当代の才人がその頭脳と詩情で世界をわし掴みにしようとした強靭な試みであり、
    殺人事件の謎よりも人間の謎、存在の謎を解き明かそうとする全ての読者たちに向けられた優美な道標である。
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